第72回全日本鍼灸学会の参加【2023年6月11日】
2023年6月9日(金)~11日(日)の期間で、第72回全日本鍼灸学会が神戸国際会議場で開催された。今回は、11日(日)のみ参加し、最新知見や鍼灸業界の動向、学校教育の状況を知る機会となり、有意義な一日となった。
神戸での開催は、2000年(第49回大会)以来、23年ぶり。大会テーマは、「鍼灸学の次代展望−経験から学び、持続可能なエビデンスをつむぐ−」と題し、鍼灸の各領域のエビデンスを総括するとともに、次代に繋がる持続可能なエビデンスの構築に重きを置いた学会内容であった。
大会委員長である北小路氏は、「中国で発祥し、日本独自の発展を遂げてきた日本鍼灸は、経験医術(治療学)です。全日本鍼灸学会は、この経験からの学びを経験で終わらせるのではなく、エビデンスに基づく鍼灸(Evidence-BasedAcupuncture)を構築し、安全・安心な医療を届けることに存在意義があります。‘眼前の患者を良くしたい’という思いで医療に勤しむには、経験から持続可能なエビデンスを紡いでいかなければなりません。」とその意義を語っています。
個人的には、「教育」及び「鍼灸臨床」に関わる幾つかのシンポジウム、特別講演に参加し、改めて『鍼灸治療の標準化の必要性』を痛感した。
鍼灸治療は、流儀流派が多く存在し、多種多様の診断システム、治療システムが存在している。多くの手技手法があることは鍼灸治療の良さであり、特徴でもある。オーダーメイドの治療が可能となり、多様性に基づいた細やかな施術につながる。ただ、エビデンス構築の難しさやエビデンスに裏打ちされない「伝統」に基づく不可解な治療や診断が存在してしまう懸念が生じる。西洋医からは、「鍼灸は何を目的に施術をしているのかわからない」と言った意見がみられることにもつながっているように感じる。
鍼灸業界において、各疾患における「鍼灸の標準治療」のコンセンサスが得られることで、学校教育においてもある一定レベルの教育水準が担保されるように思う。
疾患によっては、「鍼灸治療の標準化」は難しいが、新潟医療福祉大学の粕谷氏が提案していた「顔面神経麻痺の診療ガイドライン」に基づく、「顔面神経麻痺の鍼灸標準化」の指標は、そのとっかかりになるように感じた。
臨床家としては、最新の知見を取り入れながら各疾患のガイドラインに基づく鍼灸治療が提供できるように常にブラッシュアップを心掛けていきたい。
次回は、2024年5月24日(金)、25日(土)、26日(日)の3日間を会期に、宮城県の仙台国際センターを会場に第73回公益社団法人全日本鍼灸学会学術大会宮城大会を開催される。
やはり、鍼灸業界におけるキーワードは「医療連携」にある。。。