頸肩部の痛み

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 1997年には、NIH(アメリカ国立衛生研究所)から、鍼灸療法の病気に対する効果とその科学的根拠を認める見解が発表され、WHO(世界保健機関)でも、様々な症状や疾患について、鍼灸療法の効果や有効性を認めています。

 隣国の中国、韓国では伝統医療を正当医療として位置づけ、医療機関内で通常業務として鍼灸療法が行われています。また、西欧諸国では補完医療として、あるいは統合医療として鍼灸療法を医療システムの中に組み込み、医療の質を向上させると共に医療経済学的効果を上げようとしています。

 自由診療部門の設置などを行いながら鍼灸療法を導入している機関(病院)も散見されます。
【有効】
 歯科の術後痛、妊娠悪阻、成人の術後及び化学療法による嘔気・嘔吐
【補助療法として有用】
 頭痛、月経痛、テニス肘、腰痛、脳卒中後のリハビリテーション、繊維性筋痛症、筋筋膜痛、変形性関節症、手根管症候群、喘息

肩痛と伝統中医鍼灸

頭痛と鍼灸  肩の痛みは、「五十肩」と呼ばれる肩関節周囲炎や、腱板断裂(腱板損傷)、石灰沈着性腱板炎などが挙げられます。その他、肩の痛みを生じる疾患は数多くありますが、まずは、超音波検査の向上などにより罹患者が増えている「腱板損傷」について本院の行っている鍼灸治療を紹介します。

肩腱板損傷・断裂

 肩腱板は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋および小円筋からなり、変性や外傷によって断裂を起こします。断裂の形態によって腱板の全層が断裂した全層断裂と一部が断裂した不全断裂に分けられ、不全断裂はさらに断裂部位によって滑液包面断裂、腱内断裂および関節面断裂に分けられます。また、痛みを主訴とするもののうち、拘縮はなく腱板断裂が証明できないものは、「腱板炎」のカテゴリーに含められ、実際の場面では「肩関節周囲炎」として含められる場合も多いです。

1.肩腱板損傷・断裂における鍼灸治療

 鍼灸施術における腱板損傷の施術目的は、損傷度合いによりますが、「無症候性腱板断裂」の状態に持っていくことになります。
 腱板の一部損傷及び腱板炎(肩関節周囲炎)は鍼灸適応と考えられ、各病期に基づき施鍼・施灸を行います。
 ただ、注意しておきたい点として、多くの文献や研究結果では、「腱板断裂は原則として腱が修復することはなく、経年的に断裂した腱の変性が進行して退縮すると修復が不能となる」と結論付けており、基本的には“腱板断裂”は鍼灸不適応となります。
 切れてしまった腱板は自然回復することはなく、つなぎ合わせる“薬”や“注射”などは現在ありません。鍼灸施術においても同じで、施術したからといって切れていた腱が骨と引っ付くことは理論上難しいと考えています。鍼灸施術も道理の上に成り立っており、魔術的な治療法ではありません。

2.成因・病態生理

 断裂の背景には腱板が肩峰と上腕骨骨頭にはさまれているという「解剖学的関係」と「腱板の老化」があり、中年以降の病気といえます。明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因はなく、日常生活の動作の中で、断裂がおきます。男性の右肩に多いことから、肩の使い過ぎが原因となっていることが推測されています(整形外科シリーズ16参照)。

 断裂型には完全断裂と不全断裂がありますが、不全断裂の症状が軽いですが、治りやすいということはありません。
 若い年齢では、投球肩で不全損傷が起こることがあります。

3.診断・鑑別

 腱板断裂における特徴として、以下に挙げる点がよくみられます。

・前方や側方への挙上(肩を挙げること)で痛み脱力を訴える
 本院の患者様でも肩を挙げる時よりも下げるときに痛みや脱力感を訴えるケースがあり、鑑別ポイントになります。
・挙上90°位の位置で内外旋を行うと、痛みが顕著に出現される
 肩関節周囲炎(五十肩)や上腕二頭筋長頭腱炎など他の肩関節疾患においても同様の症状がみられます。
・腱板断裂は五十肩と異なり、筋力低下を生じる
 完全断裂の場合や急性期は、肩の可動域に制限がみられますが、軽度の損傷や慢性期、ゆっくり生じた腱板部の障害の多くは、肩の動きは維持されていることが多いです。腱板は4つの筋肉で構成されていますが、すべての筋肉が損傷を受けているわけでないことと、三角筋などのアウターマッスルが機能するため可動域は担保されることが多くみられます。
 また、五十肩とは異なり筋力低下がみられやすいため、お風呂の壁を洗ったり、茶碗を洗うなど物に対して押し付ける力が弱くなったり、字を書く時や箸を持つときなどの日常生活のふとした瞬間に違和感や痛みを感じるケースがあります。
・可動域制限は疼痛肢位回避によることが多い

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