伝統医学としてのお灸

古代のお灸

お灸写真

 図は宋・李唐原(1127年頃活躍)の画を近代に模写したもの。患者の背中に灸をすえているところを描いています。右側にいる弟子は、灸の痕に塗る膏薬の準備をしている様子がわかります。この当時は、施術者が灸箸(やいとばし)を使っており、比較的大きめの艾炷を使用していたようです。艾の質も今ほど良いものでないことが想像できるますので、相当熱かったと思います。。。図でも比較的筋肉質の男性が、医療補佐の者たちに手足を押さえつけられてお灸を受けているように見えます。相当熱いんでしょうか・・・悲鳴を上げているようにも見えます。
 本治療院ではこんな熱いお灸はしませんので・・・ご安心ください。

【引用】
 日本人とお灸について、宮川浩也先生は冊子「温故知新」の中で以下のように論じられています。
「お灸は風呂、温泉と並び、日本人の体質には欠かせない。日本人は虚証(体力低下の状態)が多くて皮膚が薄い。皮膚の防衛機能が弱いんです。皮膚の防衛機能 が停滞、低下しているところ、つまり陥下(凹み)しているところの治療は、お灸じゃないとダメなんです。病気に対する治療はいろいろあるけど、風邪の予 防、冷えの予防など、予防のためには皮膚の防衛機能が弱くなったところを補修しておきたい。それはお灸しかない。防衛機能が弱いところは「すきま風」が吹 いているので、お灸で塞いであげないといけない。」 「だからと言って透熱灸をやったら火傷(やけど)をします。日本の若い女性の皮膚って本当に薄い。現在、火傷をしない心地良いお灸へのニーズが高まってい るのは日本人の体質をよく反映しています。運動不足、日光に当たらないなど全体的に皮膚が弱くなっています。外からの刺激に対して弱くなっている。」

お灸の歴史

 お灸は日本には仏教と共に伝えられてきました。そして明治に入り西洋医学が導入されるまで1000年をこえて日本の医療を支える中で、独自の発達をとげてきました。
 江戸時代ヨーロッパとの交易がはじまると、お灸は日本からヨーロッパへそして世界へと伝えられました。そのため、お灸は今も世界中で「MOXA」と呼ばれています。お灸に使うもぐさがそのままお灸をあらわすことばとして使われています。
 東洋医学では体の不調や病気は冷えが原因とされてきました。
 お灸は、体に点在するツボを温熱で刺激して血行をよくして自律神経のバランスを整え人の持っている自然治癒力を高める働きがあるとされています。しかしその一方でお灸のヤケドするほどの熱さは例えばこらしめるために「お灸をすえる」という言葉さえ生むほどでした(せんねん灸HP)

 最も古いお灸専門書は唐代(西暦650年頃)に編纂された『千金方(せんきんほう)』(灸例篇)と言われています。唐の時代は鍼が危険と言われ、お灸が主流になった。唐~宋代は灸が流行りましたが、その後、元、明、清と鍼が主流となっていきます。
 古代では灸箸(やいとばし)でもぐさを挟み、火をつけてから皮膚へ据えていた。火がついた大きなもぐさを直に据えるため相当熱かったと思われます。日本で は江戸時代になると、大きなもぐさから小さいもぐさでお灸をすえることが盛んになりました。中国を始め、諸外国では灸文化のほとんどは廃れてしまいました が、日本では灸は廃れず、鍼と灸が活用された。
方針イメージ

お灸の生成

 灸に使用するもぐさは、ヨモギの葉を乾燥させて葉の裏側の部分だけを集めたものです。灸の方法には、もぐさを直接皮膚の上に乗せて着火させる直接灸と、皮膚との間をあけて行う間接灸などがあります。間接灸は、皮膚との間に味噌や薄く切ったしょうが、にんにくなど、熱の緩衝材になるものを入れたりして熱さを和らげますので、比較的気持がよいものです。この他にも、灸頭鍼といって、鍼の先端にそら豆ほどの大きさのもぐさを取り付けて点火する方法もあります。灸は鍼灸師の指示に従えば、自宅でも行うことができます。(AcupopJ)

 “もぐさ”とは「もえくさ(燃草)」がなまった言葉です。原料は本州・四国・九州などに自生しているヨモギ(蓬)とオオヨモギ(大蓬)で、産地としては滋賀県 の伊吹山が有名です。蓬はキク科の多年草で、春の若い葉を摘み餅に入れるので“もしくさ(餅草)”とも言われ、夏には1m前後に達し、秋に小さな花を多数つけます。葉は薬用で艾葉と呼ばれ、葉の裏面に密生している白い毛(毛茸)を集めた綿のようなものが“もぐさ”です。最高級品は、生の蓬に対して0.5~0.6%しか取れません。灸のほかには、印章用の朱肉や火打ち石から火をとる火口にも使われました。

 江戸前期までは、蓬を日陰で乾燥して木臼で押しつぶし、両手でよく揉んで綿毛を集めたようです。現在では、
①夏に蓬を刈ってすぐに葉を扱き取ります。
②2~4日、日光で自然乾燥させる。
③5~6時間、65~75℃で火力乾燥させる。
④裁断器で粉砕⑤石臼で搗く。
⑥円筒形の“けんどん”という篩で葉枝・葉脈などを落とす。
⑦“唐箕”という風力を使った篩で精製、という手順で作られます。

 蓬には植物精油のチネオールが含まれていて、艾を燃やすと独特の香りが立ち上り、温熱刺激効果に加えて、アロマテラピー効果(精神の鎮)が期待されます。また、灸治療は江戸時代に日本からヨーロッパに伝えられたので、艾をMOXAと表記します。
 『孟子』には、「7年の病に3年の艾を求める」とあります。艾は古くてよく乾燥したものが良いと言われています。
 灸をすえることを1壮・3壮・5壮・・・と“壮”と数えますが、これは壮年の男子を基準として数が決められているからで、皮膚の弱い婦人、体力のない小 児、老人や衰弱している病人には数を加減してすえていました。艾には、綿状のものをその場でひねる散艾と、細いタバコ状に薄紙で巻いて短く切った切艾があ ります。(参照:鍼のひびき灸のぬくもり)
お灸イメージ

お灸の働き

 ツボを温熱で刺激してカラダを温め血行をよくするお灸は、血液の大きな役割である酸素やエネルギー源を体のスミズミにまで運びたまった疲労物質を回収する働きを活発にすることで、コリや冷えを改善します。
 さらに痛みを伴う肩こりなどには、ツボを温めることで自律神経を刺激して、痛みの原因である炎症を抑える副腎皮質ホルモンの分泌を活発にして痛みをやわらげます。
 ツボを温め、自律神経を刺激することで体の機能を活性化して、自然治癒力を高めることもお灸本来の持つ大きなチカラなのです。(せんねん灸HP)
お灸イメージ

 

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