頭痛と伝統中医鍼灸
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鍼灸施術
慢性頭痛(緊張型頭痛)の原因
本院では慢性頭痛、特に緊張型頭痛に対する治療で最も重要視しているのが、後頭下筋群の施術です。後頭下筋群は頭の痛みと関連が密接であり、多くの患者さんで筋緊張が亢進し、頭痛を誘発しています。
後頭下筋群は、後頭部に存在する最も最下層の筋肉のため、入浴やストレッチでは緊張はとれず、マッサージにおいても、深層筋により指が届きにくく、過緊張(凝り)が蓄積してしまいます。
図1 後頭下筋群
鍼灸施術を利用するまでに至るケースは「頭痛が強い」または「なかなか痛みが取れない」、「薬やマッサージなどの治療を受けても症状が取れない」といったものが多く、中等度以上の状態で来られます。
そのような場合は、薬物療法やマッサージ、日本鍼では頸の奥深くの筋肉の凝りを取ることは出来ず、頭痛の根本的緩和を図ることは出来ません。
後頭下筋群への直接的アプローチが必要となりますが、上記が示すように後頭部の最も深い筋肉であり、指が届きにくく上手く弛めることが難しい筋肉のため、鍼施術においても技術を要します。
鍼は的確かつ直接的に筋肉へ刺入することができるため、後頭下筋群の緊張による頭痛は奏功します。
後頭下筋症候群への刺鍼
後頭下筋症候群)
後頭下筋群は頭痛の他、眼精疲労、めまい、パニック障害など他の症状を誘発します。この筋群の周辺には、神経が豊富に存在しており、筋肉の緊張により神経を圧迫し、上記の症状を誘発すると考えています。
本院では「後頭下筋症候群」と命名し、施術に当たっています。
図2 後頭下筋群への刺鍼
後頭下筋群への施術法は、中国で行われている「項叢刺」及び「排刺」を利用して行っています。
項叢刺の刺鍼点は、瘂門穴、風府穴、下脳戸穴など全部で15穴あり、全て後頭下筋へ向けて深く刺入し、筋肉の過緊張(筋肉のこり)を弛めていきます。
後頭下筋群へ鍼が刺入されると後頭部の深部や眼部、側頭部などに心地よい感覚(得気(ひびき))が得られ、凝り固まった筋肉がほぐれていきます。
なお、「項叢刺」は、脳卒中による片麻痺や癲癇、頸椎症、神経症などに適用される刺法でもあります。
後頭下筋群と経穴
鍼灸施術は、経穴(ツボ)を使って治療を行っていきますが、後頭下筋群上には複数のツボが存在しており、そのツボをランドマークとして刺激を行っていきます。
【小後頭直筋】風府穴
【大後頭直筋】瘂門穴
【上頭斜筋】風池穴、完骨穴、翳明穴
【下頭斜筋】天柱穴、翳風穴
後頭下筋群と片頭痛
後頭下筋群が硬くなったり、硬結ができるとトリガーポイントと呼ばれる関連痛を誘発するポイント(ツボ、経穴)ができ、頭痛、片頭痛様の症状を誘発します。側頭部まで関連痛がみられるため、片頭痛による血管系ならびに自律神経系統が原因であると考えられてしまいますが、実は後頭部に存在する後頭下筋群が誘発する症状である場合があります
図3 後頭下筋群とTP
後頭下筋群
後頭下筋群は、4つの小さな筋肉からなっており、左右4対計8つの筋肉から構成されています。
頭頸部の姿勢維持に係る筋肉の為、臥位になる以外は緊張し続けているため、長時間のデスクワークやスマホ操作、事務作業、過重労働など現代社会の勤務形態により頸部の深層筋(後頭下筋群)は疲弊し、痛みなど様々な症状で本人に知らせます。
後頭下筋群の凝りが蓄積し、後頚部が盛り上がっているケースや患者さん本人が熱感を感じるほどひどい場合に遭遇するケースが多々あります。このような状態は、東洋医学では筋肉の過緊張による「気の滞り」から熱が発生したと考え、「気滞」または「気滞血瘀」として鍼施術を行っていきます。気が流れることで神経や血が流され、気滞による熱が解放することで症状が緩解されます。
後頭下筋群の解剖)
後頭下筋群は後頭部と首の付け根の最深部にある小筋群で、頭部の後屈や側屈、回旋の動作に関わります。パソコンやスマホを見る姿勢、下を向く姿勢(頚部の前屈)の維持で常に収縮を強いられると、頭痛や眼精疲労、めまいなどを誘発します。
図4 後頭下筋群と後頭神経
表1 後頭下筋群の解剖
大後頭直筋 | 小後頭直筋 | 上頭斜筋 | 下頭斜筋 | |
起 始 | C2棘突起 | C1後結節 | C1横突起 | C2棘突起 |
停 止 | 下項線中央部 | 下項線内側1/3 | 大後頭直筋停止 | C1横突起 |
作 用 | 両側:頭部後屈 片側:同側回旋 | 両側:頭部後屈 片側:同側回旋 | 両側:頭部後屈 片側:同側側屈 反対側回旋 | 両側:頭部後屈 片側:同側側屈 反対側回旋 |
支配神経 | 後頭下神経(C1) | 後頭下神経(C1) | 後頭下神経(C1) | 後頭下神経(C1) |
後頭下筋群と後頭神経
後頭部から側頭部にかけての痛みは、後頭神経が支配しています。また、後頭神経は頭頂部で三叉神経と吻合しているために眼窩部、および眼の上や奥にも痛みを生じます。
後頭神経は、「大後頭神経」と「小後頭神経」に大別され、それぞれ支配領域が異なります。
大後頭神経)
第1~第3頚神経の後枝は発達がよく,C1が後頭下神経,C2が大後頭神経,C3が第3後頭神経に分岐します。
一般的な解剖学書では、第2頸神経の後枝を起始として、環椎(C1)と軸椎(C2)との間で下頭斜筋の下縁から出て下頭斜筋と頭半棘筋の間を頭側やや内側に走り,深頸筋に運動枝を与えた後、頭半棘筋と僧帽筋を貫いて後頭動脈の内側を走行し上項線の付近で皮下に現れると記されています。
小後頭神経)
小後頭神経はC2とC3の後根から生じ,後頭部の外側部(耳介後方)を支配しています。胸鎖乳突筋後縁に沿い上行し,正中から約 6~7 cm,外耳孔下縁から約 4~6 cm尾側において胸鎖乳突筋後縁から皮下に現れます。
後頭神経痛は、その診断基準から「大後頭神経」、「小後頭神経」または「第3後頭神経」いずれか1つ以上の支配領域に分布する痛みで、頭皮や頭髪への刺激で異常感覚が誘発されることも多い激痛であり、疼痛発作を繰り返すものとされています。
後頭神経痛患者の手術によって、下頭斜筋(OK Sun Kim,2010)および頭半棘筋(Byung-chul Son, 2013)による絞扼性障害であったとする症例が報告されています。また、後頭部の痛みの原因として、C1も関与します。C1後枝は深項筋の上部を支配する純運動枝と思われがちですが、独立皮枝が存在し(熊本,1972,国分1984)、このC1後枝由来の知覚線維が下頭斜筋部において大後頭神経に吻合しており、大後頭神経痛の発生に関与することが指摘されています(苛原,1989)。さらに、このC1後枝は副神経の脊髄枝とも吻合しています(LangJ,1986)。
これらの知見と治療経験から、大後頭神経痛の発症には項部筋群の緊張が関与
しており、下頭斜筋および頭半棘筋の緊張による絞扼性障害として捉える視点が臨床的に重要であると言えます。後頭下筋群の過緊張が長期に続く場合、後頭神経の絞扼神経障害を併発します。その結果、痛みだけでなく、神経絞扼独特の熱っぽさが生じ、患者さんの中には後頭部を冷やすと楽になる人もいます。さらに病態が続いた場合、パニック障害や不安神経症、気分障害などの発症につながってしまいます。
パニック障害や不安神経症の方は、抗不安薬を服用されており、短期間に強く作用する薬などを頓服的利用されています。抗不安薬や抗精神薬の中には筋弛緩作用の強い薬も多く、後頭部の過緊張などが服用によって一時的に緩和され、症状が落ちついてきます。しかし、本質的な部分の原因が取り除かれず、薬物を継続し続けていく結果、より強い薬に代わっていくとともに依存性につながり、薬物における副作用に苛まれてしまいます。
鍼施術は後頭下筋群の緊張を弛めることによって、抗不安薬と同じような作用がみられ、原因に対する直接的な治療となるとともに減薬が期待できます。
後頭神経ブロックと経穴)
後頭神経上には経穴が存在しており、大後頭神経ブロック点として利用されている部位は、天柱穴とほぼ同じ場所であり、鍼灸施術でも後頭神経痛のブロック療法と似た効果を出すことができます。ブロック注射の場合は、1、2カ所になりますが、鍼灸効果を上げるため、本院では天柱穴周辺のツボを複数利用してブロック作用を高めるようにしています。
<大後頭神経上の経穴>
【督脈】風府、脳戸、強間、後頂、百会
【膀胱経】絡却、玉枕、天柱穴
【胆経】承霊、脳空
<小後頭神経上の経穴>
【胆経】卒谷、天衝、浮白、頭竅陰、完骨
【三焦経】天牖
後頭下筋群と脳底動脈
後頭下筋群の下には「椎骨動脈」が存在し、「内頚動脈」と吻合することで「脳底動脈」を構成します。後頭下筋群を弛めることで椎骨動脈の循環を直接的または間接的に改善することが期待でき、その効果は脳底動脈にまで波及させることができます。
図5 脳底動脈と椎骨動脈
脳底動脈は、脳を栄養する血管である皮質動脈(前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈など)および穿通動脈に枝分かれしていくため、脳表面から脳内血管まで影響を及ぼす可能性があります。
川の源流の流れが良くなれば川下までその影響を及ぼすことができるように、脳全体を栄養する源流血管の主幹動脈(椎骨動脈、内頚動脈)の血流が良くなることで脳循環の改善が期待できるわけです。
後頭下筋群の過緊張が長期間続くと頭が重だるく眼の奥に痛みを感じ、パニック障害や気分障害などの神経症の発症にもつながっているようです。
「後頭下筋群の緊張」と「精神疾患」の関連は多くの臨床家が指摘していますが、機序として考えられるものとしては「脳循環不良説」が考えられ、後頭下筋群を効率的に緩め、副交感神経を賦活する鍼施術は脳循環の改善を促すとともに不安神経症の症状の和らげることにつながるものと推測しています。
長期間、後頭下筋群の過緊張を起こしている方は、後頭部が盛り上がっていることが多く、そのようなタイプの人は、椎骨動脈の血流低下から脳循環不全を生じる可能性があります。脳梗塞予防も兼ねて定期的に後頭筋群の緊張をほぐし、ケアに努めることで積極的な予防医学になると考えます。
頭痛とは
1.頭痛の分類
後頭下筋群の緊張による頭痛は、「第4の頭痛」とも言われ、第1~第3の頭痛は「一次性頭痛」を指します。
頭痛は大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分けられ、「一次性頭痛」は、頭痛の原因となる病気がなく、頭痛そのものが病気の頭痛で、統計学的には頭痛全体の8割以上を占めています。残る1~2割程度が二次性頭痛で、最近の研究では、薬物使用過多による頭痛(MOH)が多くを占めていることが分かってきており、市販の頭痛薬の飲みすぎ(使用過多)には注意が必要です。
一次性頭痛は、さらに『緊張型頭痛』、『片頭痛』、『群発頭痛』に分けられ、基本的に脳などの中枢神経の器質的疾患の関与がない頭痛を指し、鍼灸適応の頭痛となります。
二次性頭痛は、頭蓋内の腫瘍やくも膜下出血、脳梗塞、感染症など器質的疾患が原因で生じる命に関わる頭痛で、鍼灸不適応疾患となります。
表2 国際頭痛分類(第3版:ICHD-3)
一次性頭痛 | 1.片頭痛 / 2.緊張型頭痛 / 3.三叉神経・自律神経性頭痛 |
二次性頭痛 | 頭頚部外傷による頭痛 / 頭頚部血管障害による頭痛 非血管性頭蓋内疾患による頭痛 / 感染症による頭痛 物質またはその離脱による頭痛 / 精神疾患による頭痛 ホメオスタシス障害による頭痛 頭蓋骨、頸、目、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害にによる頭痛または顔面痛 |
有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛及びその他の頭痛 | 脳神経の有痛性病変及びその他の顔面痛 / その他の頭痛性疾患 |
頭痛の分類については、1988年に国際頭痛学会によって作成されたものが広く使われていたが、症候学的分類が中心であり、その後多くの研究、数々のエビデンスの蓄積などにより、実態に即した新分類が2003年9月に発表され、現在広く使用されているます。
なお、2013年7月には国際頭痛分類第3版ICHD-Ⅲのbeta版が発表されています。
表3 一次性頭痛の分類と特徴
一次性頭痛の分類 | 緊張型頭痛 | 片頭痛 | 群発頭痛 |
性比(男:女) | 5:4 | 1:4 | 5:1 |
痛みの場所 | 頭全体、後頭部等が締め付けられる痛み | 片側または両側 | 眼窩部、側頭部 |
痛みの性質 | 締め付け感、圧迫感 頭重感 | ズキズキ拍動性 | えぐられる、突き刺さる痛み |
随伴症状 | 肩こり、頸部筋緊張 | 悪心、嘔吐、 前兆(閃輝暗点) | 流涙、鼻閉、眼瞼浮腫など |
持続時間 | 30日間~7日間 | 4~72時間 | 15~180分 |
痛みの程度 | 軽度~中等度 | 中等度~重度 | 重 度 |
緊張型頭痛
昔は“筋収縮性型頭痛”といわれ、最も有病率の高い頭痛です。
「筋収縮性頭痛」の場合、原因が筋肉の緊張に限定され、精神的緊張などストレスによる心的原因が含まれないため、現在は精神的緊張、筋肉的緊張を含めた概念として「緊張型頭痛」と名称が統一化されています。
両側性の締めつけ・押さえつけられるような痛みを訴え、頭痛の程度は軽-中等度で、日常生活動作で痛みの増強はなく、通常は悪心・嘔吐もみられません。光過敏・音過敏はあっても1つ。
緊張型頭痛は低頻度のもの、高頻度のもの、慢性(1か月に平均15日以上)に分類され、さらにそれぞれに頭蓋周囲の圧痛のあるものとないものとがあります。
緊張型頭痛の鍼灸施術
緊張型頭痛の詳しい原因はわかっていませんが、ストレスや睡眠不足、姿勢の悪さなどが主な原因とされています。発症には不合的に多因子が関わりますが、緊張型頭痛は夕方以降に症状発現が多く、頸肩をほぐしたり、温めることで症状が和らぐことから精神的疲労及び筋疲労の影響は大きい病態です。
鍼灸施術は、筋緊張をほぐし、血流を改善を図ることができます。
具体的には、頭頸部や肩部の一部指では届きにくい筋肉群、「後頭下筋群」や「斜角筋」、「板状筋」、「肩甲挙筋」、「菱形筋」等を効率的に緩めることができ、様々な治療法がある中で原因に対して直接的に施術できる方法と考えています。薬物療法は服用後、楽になることがありますが、根本的な原因に対するアプローチではないため、薬が切れるとまた症状が誘発されます。
なお、薬物使用過多による頭痛(MOH)については、下記に説明しています。
片頭痛
国際頭痛学会診断基準では①持続時間は4時間~72時間、②片側性、拍動性、中等度-重度(日常生活に支障あり)、階段の昇降などの日常生活動作増悪のうちの2項目以上を満たす頭痛、③随伴症状として悪心または嘔吐、あるいは光・音過敏のうち1項目以上を満たすとし、①-③を満たす発作が5回以上あれば片頭痛と診断されます。
片頭痛の痛みは、頭蓋内血管の拡張と血管周囲の炎症に起因すると考えられています。片頭痛には大きく分けて前兆のない片頭痛と前兆のある片頭痛があります。
片頭痛の鍼灸施術
これまで「脳の血管拡張が原因」と考えられていましたが、近年の研究ではその発生に「三叉神経」が関わっていることが分かってきています。ストレスや睡眠の乱れ、天候の変化などが誘因となって三叉神経が刺激され、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が三叉神経から放出され、この物質が脳の血管の周囲に炎症をもたらすことで片頭痛が起こるとされています。
片頭痛では、ストレスやアルコール、女性では月経が誘因となる場合があり、そのほかにも、チーズやチョコレート、天候の変化が誘因となることがあります。
片頭痛は額やこめかみ、首筋に冷たいタオルや冷却シートなどで冷やすと痛みが緩和されることがあります。緊張型頭痛の場合は冷やすことで痛みが増すことがあるため注意が必要です。
片頭痛に対する鍼灸施術は、頭痛が最も発症しやすい側頭部の側頭筋、または片頭痛の最近の発症機序は三叉神経血管説が有力視されていることから、同神経を目標に施術を行います。また、後頭下筋群及び椎骨動脈への施術により緩解しやすいため、同部位への施術も併せて行っていきます。
三叉神経は鍼灸施術でも刺激することができ、特発性三叉神経痛などは鍼灸適応疾患となります。
群発頭痛
ICHD-3の頭痛分類では、群発頭痛は、「三叉神経・自律神経性頭痛」に含まれ、三叉神経・一側の眼窩部を中心とした、えぐられるような激しい痛みが特徴であり、痛みと同側の流涙、結膜充血、鼻閉、鼻漏などを伴います。痛みは15分-3時間持続し、2日に1回から1日8回の発作が数週-数か月間群発します。発作は就寝中に多く、群発期間中には飲酒により頭痛が誘発されます。男性に多いとされています。
群発頭痛に対する鍼灸施術
旧国際頭痛分類では、群発型頭痛は病態がよく似ていたこともあり「片頭痛」に分類されていましたが、症状や性差、痛みの強度の違いなど疫学的研究から徐々に明らかになり、現在のように片頭痛から外され、「群発頭痛」と明記されています。
よって、群発頭痛に対する鍼灸施術は基本的に片頭痛と同様に、自律神経を中心とした調整法を施術方針としてみていきます。
薬物使用過多による頭痛(MOH)
鎮痛剤を月に15日以上(トリプタンなどでは10日以上)内服している場合、薬物使用過多による頭痛(MOH:Medication-Overuse-Headache)の可能性があり、薬物使用に対するケアが必要となります。
症状は慢性緊張型頭痛や慢性片頭痛と酷似していますが、朝方の頭痛はMOHの特徴の一つとされています。
下記に日本頭痛学会による診断基準、診断の目安をまとめています。
<頭痛診療ガイドライン>
- 月15日以上の頭痛
- 3カ月以上服薬している
アセトアミノフェン、NSAIDs等 月15日以上 / カフェイン等含む複合剤 月10日以上 - 頭痛は薬物使用のある間に出現し、著明に悪化する。また、使用中止後、2カ月以内に消失
頭痛に限りませんが、簡便性から痛みがあると鎮痛薬を服用し、習慣化やより強い薬の服用など薬物依存につながってしまいます。特に、頭痛発作を恐れ予防的服用も多くみられ、服用の日常化から知らず知らずの間にMOHになってしまいます。
薬物使用過多による頭痛に対する鍼灸施術
MOHは二次性頭痛に分類されるため、一般的には鍼灸不適応となりますが、頭痛の原因に施術することにより、頭痛頻度や痛みが減るとともに薬物利用頻度の減少させることができるため、鍼灸施術が奏功しやすい頭痛に入ると考えています。
薬物療法の利用目的の多くは、鎮痛目的の対症療法であり、深部筋の過緊張や自律神経調整が必要な頭痛に対しては原因療法ができません。鍼灸施術によって病巣への直接的作用を発現することで頭痛薬の使用頻度を減らすことや頭痛発作予防薬を用いることなどが改善策となり得ると考えます。
二次性頭痛とレッドフラッグ
頭痛の中には生命にかかわるような危険な頭痛もあり、危険徴候をまとめて“レッドフラッグサイン”と呼ばれることがあります。レッドフラッグサインがみられる頭痛は鍼灸不適応となるため、速やかな専門医の受診がすすめられます。
表4 危険な頭痛の特徴(レッドフラッグサイン)
- 突然の頭痛(脳出血など)
- 今まで経験したことがない頭痛(くも膜下出血など)
- いつもと様子の異なる頭痛
- 頻度と程度が増していく頭痛
- 50歳以降に初めて経験する頭痛
- 力が抜けたり、ろれつが回らない、手足の痺れを伴う頭痛(脳梗塞、脳出血など)
- 癌や免疫機能が低下している人の頭痛(脳腫瘍など)
- 熱が出て、頸が曲げられないような頭痛(髄膜炎など)
レッドフラッグの語呂合わせ的なものとして「SNOOP」という二次性頭痛を見分ける指標もあり、わかりやすくまとめられています。
頭痛の鍼灸施術Q&A
頭痛施術にあたり、よく質問を受ける内容について、記載しています。
来院される前にご参考ください。
頭痛は鍼で治りますか?
一般的な慢性頭痛の多くが、「一次性頭痛」ですので、鍼施術は比較的効果がみられやすく、マッサージや神経ブロックよりも頭痛の軽減がみられたケースも多くあります。また、薬物療法は対症療法に過ぎませんが、鍼施術は根本的治療につながります。
ただ、頭痛の原因によっては、仕事中の姿勢や日常生活の状況により、頭頚部の環境が元に戻ってしまい、頭痛の再発につながることがあります。それ以外にも性差(女性ホルモンの変化)、年齢(更年期)、頭痛の罹患歴などにより鍼施術後の変化・効果持続時間は一様ではありません。
何回ぐらいで治りますか?
特に頭痛の原因で最も多い、「緊張型頭痛」は即効性があり、本院で行っている後頭下筋群への刺鍼は著効を示します。
片頭痛についても自律神経系の調整も図られることから効果が数回で得られやすい頭痛でと言えます。
通う頻度はどのくらいですか?
症状が安定している、いわゆる緩解期に入れば1週間~10日に1回、2週間に1回程度で間隔をあけて来院される方が多いです。
中国鍼は痛くありませんか?
多くの方は、日本鍼(細く短い鍼)で十分効果が出ていますので、初回の治療含め一般的には日本鍼を使用することになります。
鍼は太くなればなるほど痛みが出やすいので、中国鍼は“痛い(=ひびく)”ですがよく効きます。
お値段はいくらしますか?
肩凝りや背中の凝りなど見られる場合は、局所2か所施術料金となります。
詳しくは施術料金表をご確認ください。
なお、本院では尼崎在住で国民健康保険加入者につきましては、市発行の施術券を利用することができます。