お灸の効能として、大きく分けて温熱による効果と蛋白変性による効果があります。蛋白変性は、皮膚を焼くことで皮膚が主体にとって異物になり、異物と認識した免疫系が活性化され、白血球の数が増えるため、結果的に免疫が上がります。よって、アレルギー疾患やそのほかの免疫疾患にも一定の効用が期待できます。
お灸にも様々な種類の方法がありますが、イボ、タコ、魚の目に対しては、焦灼灸を使用します。焦灼灸の目的は、名前のごとく病的組織の焦灼破壊であり、対象はイボ(尋常性疣贅)、ウオノメ(鶏眼)などになります。この方法は、古くは毒虫、蛇、鼠などに噛まれた傷口の止血、消毒に用いられました。
なお、尋常性疣贅などに対する施灸方法は、対象にに適した大きさのもぐさを固めて作成し、イボの上面に何壮も行います。大きいイボの場合は数日の間に反復して施灸を行います。
1.概念
イボ)
「イボ」は、皮膚から盛り上がっている小さなできもの一般を指す俗語です。最も普通の「イボ」は「ウイルスが感染してできるイボ」で、ウイルス性疣贅と呼ばれるものです。その他にも、ミズイボ(伝染性軟属腫)や中年イボ(スキンタッグ)や年寄りイボ(老人性疣贅あるいは脂漏性角化症)を初めとする多くの皮膚病があります。
皮膚科領域で呼ばれる狭い意味での「イボ」は、通常「ウイルス性疣贅」を指すようです。
ウオノメは、通常大人の足の裏や趾(ゆび)などにできる、直径5~7mm程の硬い皮膚病変で、歩行や圧迫により激しい痛みを伴うのが特徴です。中心に魚の眼のような芯が見えるので俗にウオノメと呼ばれ、専門用語では“鶏眼(けいがん)”と言います。
何らかの理由で、一定部位に繰り返し異常な圧迫刺激が加わると、角質が厚く芯のようになり、真皮に向かって楔状に食い込んで行く場合があります。こうしてできたのが魚や鶏の眼のように見えるウオノメです。圧迫や歩行などに伴って、楔状に食い込んだ角質の芯が神経を圧迫して痛みを生じます。 タコ)
タコ(胼胝)もウオノメと同じように、どこ かの皮膚の一部が慢性の刺激を受けて角質層が厚くなる病気ですが、ウオノメと違って刺激を受けた辺り全体の皮膚が少し黄色味を帯びて、厚く硬くなって盛り 上がって来ます。ウオノメがふつう足の裏にできるのに較べて、タコは足の裏以外にも、生活習慣や職業やその人の癖などにより、身体のあちこちにできます。ウオノメと違って痛みの無いことが普通で、むしろ厚くなった角質のために感覚が鈍くなっていることもあります。(引用:日本皮膚科学会資料)
2.治療
はりきゅう治療だけに限りませんが、疣贅や胼胝、鶏眼などの病理組織に対しては“破壊”と“創造”による治療がメインとなります。
病的組織を一度破壊し、正常組織の再生を促し、皮膚の正常化を行う治療を行っていきます。
艾または火針によって直接、病理組織に対して熱刺激を与え、組織を破壊していきます。
火針においては疣贅は効果的で、胼胝や鶏眼には艾によるお灸が効果的な印象を持っています。
ここまで大きいイボについては施術したことがなかったため、当初は迷いましたが様々な方法で無事に取ることができた症例です。火針では限界があり、透熱灸を上手く利用しながら施術を行いました。1ヵ月以上かかりましたが、長年苦慮していたイボを取ることができ、本人も喜んでいました。
お灸に少しでも興味を持って頂ければ幸いです。
透熱灸)
艾を体表上で点火、燃焼させて温熱性の侵害刺激等を与えて、その生体反応により疾病の予防や治癒をはかる灸法。