交通事故後遺症と伝統中医鍼灸
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交通事故後遺症には、交通事故による症状が治らず、「症状固定」と診断されたものを指して使われています。後遺症として、頸や腰の痛み、手の痺れや頭痛、めまい、ふらつき、下肢の感覚障害など症状は多岐にわたりますが、一般的に車の追突事故の際、頭部や腰部に強い衝撃を受けるため、それぞれ、むち打ち損傷(外傷性頚部症候群)、外傷性腰部症候群(腰部捻挫)と診断されることが多く、事故による衝撃が強い場合は「脊髄震盪」として病名が付けられることもしばしばみられます。交通事故による損傷は、表層の組織よりも骨や靭帯、神経など深部の組織へのダメージが大きく、完治せず保険治療が終了し、「症状固定」による後遺症に悩まれる方が多くいます。
そのような中で、より深部の損傷をうけている組織、特に深部筋のダメージへの直接的アプローチが可能な鍼灸施術が症状緩解に効果を発揮します。交通事故の状況、身体へのダメージにもよりますが、頸部の過緊張は強く、頸部全体が張っており、頸部の可動域も著しく低下しているケースもあります。
症状の多くは、事故直後だけでなく、数カ月たっても神経及び筋肉が過緊張起こしている状態であり、頸の牽引やマッサージでかえって痛みが強く出てしまうことがあり、軽度のマッサージや温熱療法、薬物療法で様子を見ることしかできません。疼痛や自律神経症状を発現させている筋肉の過緊張、神経の興奮は“深部”で起こっており、痛みを発している深部の病巣に介入できない状態が続けば続くほど回復は遅れ、緩解するまで長期間を有するとともに保険会社より治療終了を告げられます。
治療終了までの短い期間の中でできるだけ元の状態に回復させるためにも深部への直接的アプローチができる鍼灸治療が有効であると感じています。
現在、鍼灸施術における頸椎捻挫(後遺症)は、「保険適応」となっており、鍼灸の有効性が認められています。
保険を利用した鍼灸施術の場合、「医師の同意書」が必要となりますので、保険治療をご希望の方は本院までご連絡ください。また、保険治療の場合は安価で施術を受けることができますが、施術時間等の様々な制約(治療時間、使用本数など)がありますので、ご注意ください。
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交通事故後遺症に対する鍼灸施術
筋緊張緩和・血流改善に伴う疼痛の軽減
鍼灸施術は、過緊張を起こしている深層筋群に対して、直接的アプローチしていきます。
締め付けられている「神経」や「血管」を開放し、痛みの根源となっている原因に作用させます。
外傷性頚部症候群においては、「斜角筋」や「頭最長筋」、「頸最長筋」など頸部のより深部筋群が異常スパズムを起こしていることが多く、長時間労働により頸部の痛みや上肢の症状が出現します。
僧帽筋や板状筋、肩甲挙筋等の比較的表層レベルの筋群は、マッサージや入浴、温熱療法で緊張緩和は図ることができますが、深部筋はそうはいきません。マッサージの場合では、深部まで指が届きにくく、アプローチする場合は指の圧を高めなければならず、過剰刺激になる場合があります。緊張が亢進している筋群に対しては、興奮を鎮める調整が必要となります。
図1 斜角筋の解剖
自律神経の調整
交通事故のダメージにより脊髄震盪が生じ、自律神経の交感神経系が乱れ、バレリュー症候群やRSD(CRPS)などの症状が出現することがあります。鍼灸施術の治効理論の一つに自律神経系の調整作用があり、交感神経の過緊張緩和を図ることができます。
自律神経系等の調整を行うため本院では、鍼灸治療効果を最大限に引き出す治療法として柳谷素霊先生の「自律神経調整刺鍼法」、いわゆる中国医学における華佗夾脊穴を利用した治療を行っています。
背骨に沿って自律神経は走行しており、背骨の際に鍼刺激を行うことで、直接的に自律神経系統の調整を行っています。脊髄神経は左右一対ずつ分岐し、椎間孔から脊柱管外へ出ていき、一部の神経は交感神経幹を成し、胸椎レベルから腰椎まで縦につながり、自律神経を構成します。
背骨に沿って刺入することによって、自律神経幹付近の神経を刺激することによって自律神経を直接的に刺激する狙いがあります。
華佗夾脊穴)
夾脊穴は腰背部で、第1胸椎から第5腰椎棘突起下の両側で後正中線の傍ら0.5寸で、一側に17穴、左右で34穴あります。
本穴の治療範囲は広く、胸椎上部の穴位は、心肺や上肢の疾患を治療し、胸椎下部の穴位は、胃腸疾患を治療します。腰部の穴位は、腰や腹、下肢の疾患を治療します。本穴は頸椎両側の夾脊は含まないため、後世に「頸夾脊」という経外穴が設けられました。その位置は後頸部正中線の両側0.5寸で、第1頸椎棘突起下から第7頸椎棘突起下縁の両側、左右で十四穴あります。その刺灸法は夾脊穴と同じで、頭顔部と頸項部の疾患を主治します。
交通事故後遺症とは
外傷性頸部症候群
外傷性頚部症候群は頸椎捻挫、むちうち症と呼ばれ、交通事故やスポーツ外傷などで急激な力が頸部にかかった際に生じる。頸椎周囲の組織損傷に基づく症候です。筋や靭帯の損傷が認められる場合がありますが、骨折や脱臼は認められないものになります。
「むち打ち症」という呼称)
特に交通事故を起因とするとき、いわゆる「むちうち症(むちうち損傷)」と俗称が知られていますが、この名称は難治性(実際は軽症が多い)、補償の問題などのネガティブなイメージで認識されているため、「外傷性頸部症候群」が使われるようになっています。
頭部の軟部組織の損傷により起こるとされていますが、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)との関連も指摘されています。
一般に、画像検査では異常は認めずに頸部の疼痛やしびれ、可動域制限、頭痛や耳鳴、悪心など様々な症状を呈するが、症状の多くは数週間で徐々に軽減していきます。
また、頸部痛の他、「バレ・リュー症候群」と呼ばれる頭痛、めまい、耳鳴り、目のかすみといった自律神経症状や上肢のしびれなどの神経根症状、精神症状などを呈します。
上記のように多彩な症状を呈しますが、これらの中で発生頻度が高い症状は「頭痛」、「頸部痛」、「運動制限」の三つで、本疾患の三大症状とされています。
交通事故に対する鍼灸施術Q&A
鍼灸施術に対し、よく質問を受ける点については、下記にまとめていますので事前にご確認ください。
どのぐらいの頻度で通えばよいですか?
自動車損害賠償責任保険は利用できますか?
ただ、利用の可否は、加入されている保険会社さんにありますので、施術を受ける前に利用できるかについては確認ください。
保険会社によっては鍼灸院や接骨院での治療は認めない場合もありますので、ご注意ください。
施術料金はいくらかかりますか?
頸椎捻挫だけでなく、腰椎捻挫や上下肢の症状、自律神経書状など部位が増える場合は、2か所料金、全身治療料金となります。
詳しくは施術料金をご確認ください。