スモン病

1.概念

 スモン(亜急性脊髄視束神経症;SMON:Subacute myelo-optico-neuropathy)は腹痛・下痢などの腹部症状に引き続いて、特有の痺れ感が足先よりはじまり、下肢全体あるいは胸・腹部にまで上行する神経疾患です。

 このような感覚障害に加えて、下肢がつっぱったり(痙縮)や力が入らなくなったり(脱力)し、重症例では視力障害によって失明し、さらには脳幹障害による死亡例もありました。

 1960年代にはわが国で多発し、これまでになかった病気であったことと、また同時に各地で集団発生したことから、新しい感染症と疑われ、深刻な社会問題となりました。 1970年に整腸剤であるキノホルム(chinoform,clioquinol)の副作用が原因とする説が出され、国の中央薬事審議会によってキノホルムの使用が禁止されてから新たな患者の発生はなくなりました。

 患者のキノホルム服用歴などより、疫学的にはスモンの原因は本剤であるのは明らかで、1972年末までの患者数は9,249人で、ピーク時には1万2千人以上に達したと推定されています。

 2014年春現在、約1,639人がスモン患者として認定されており、それよりも若干上回る数の患者の存在が推定されています。薬害であるスモン患者の恒久対策として、厚生労働省難治性疾患政策研究事業「スモンに関する調査研究班」は、以前より毎年全国規模で患者さんの検診を続けています。

2.症状

 スモン(SMON)という名前は、Snbacute Myelo-Optico Neuropathy(亜急性視神経脊髄末梢神経炎)の頭文字をつなげたもの。

 キノホルム(Clioquinol)という整腸剤の副作用によって引き起こされた薬物中毒であることが判明しており、この薬が販売中止になって以降は新たな症例の発生はなくなっています。
 
 男女比は1:3で女性の患者さんの方が多く、まず下痢や腹痛などの消化器症状が先行します。もともと薬を服用するきっかけとなった腹部症状とは別に、SMON特有の症状が加わると考えられており、激しい腹痛やお腹の張り、便秘などがみられます。
 
 引き続いて急性から亜急性の経過で神経症状が出現します。足先から始まるしびれ感が初発症状であることが多く、徐々に上向してお臍や胸まで広がることがあります。両側性で、下肢末端の方にシビレが強い傾向があり、患者さんの訴えとしては、ビリビリ感、ジンジン感、足裏に何か貼りついたような違和感、締めつけられるような感じなどがみられます。

 他覚的にも表在感覚や深部感覚が障害され、約半数の患者さんに運動機能障害がみられます。主に下肢の筋力が低下し歩行が障害されることが少なくありません。位置感覚の障害による失調も加わるため転倒のリスクが高くなります。

 下肢の深部反射が亢進し、Babinski徴候が陽性になることもあります。重症の場合には上肢にも障害が及ぶことがあり、視力障害は20~30%の患者でみられます。最重症の場合失明し、約5%の患者が全盲であるというデータもあります。

 自律神経も障害され、足の冷感、尿失禁などの排尿障害、便秘や下痢、あるいは下痢と便秘の交代といった排便障害がみられます。

 神経系以外の症状としては緑色舌苔や緑色便が知られています。患者さんの尿中の緑色結晶の分析結果が、キノホルムが病気の原因であることを突き止める重要な手掛かりとなりました。キノホルムの服用を中止することで症状は少しずつ回復しますが、感覚、歩行、視覚に様々な程度で後遺症を残すとされています。

 現在スモン患者は平均年齢が79歳と高齢化しており、スモン元来の症状の上に、白内障、高血圧、脊椎疾患、四肢関節疾患などの様々な随伴症状が加わります。さらに精神症状として不安焦燥、心気症や抑うつなどがみられることがあります。従来スモン患者では少ないとされていた認知症も年々増加傾向になっています。未成年で発症した例(若年発症スモン)が少ないですが、成人発症例とは少し症状が異なり、視力障害や痙性麻痺が強いとされています。

3.鍼灸施術

〔現代医学〕
 現代医学では、根治法はなく対症療法が中心となります。

 対症療法として、ビタミンB12などのビタミン剤投与や副腎皮質ステロイドが投与されています。また、下肢の神経症状に対しては、ノイロトロピン注射・錠剤、抗うつ剤、ロキソニンなどの鎮痛剤投与などがが行われ、そのほか、スモン・リフレッシュ体操も考案されています。

〔東洋医学〕
 東洋医学においては、「湯液(漢方)」と「鍼灸・マッサージ」の施術がスモン病による各症状の緩和に活用されています。

 特に神経症状に対しては有効性がみられ、公費による扶助を受けることができます(下記参照)。
 
 本院の方針としては、鍼灸施術のみでスモン病の症状を抑え込むことは難しいと考えています。そのため、スモン病の専門科を受診の上、薬物療法と鍼灸施術の併用を基本方針としております。
 
 西洋薬と鍼灸治療を併用することで、薬の効果を維持し、副作用を軽減することができ、スモン病の各症状に対して効果的な施術であると確信しております。(その他、運動や湯液なども併せて併用していくことはもちろん必要となります)  


※兵庫県ではスモンに対するはり、きゅう及びマッサージ治療研究事業が実施されています。
 スモン患者の方に対し、保険外給付による、はり、きゅう及びマッサージ治療の施術費が月7回を限度に公費で負担されますので、是非活用の上、QOL向上を目的にご利用いただければと思います。
 公費負担を受けるには、医師の診断書など必要な書類をお住いの保健所に毎年申請する必要がありますので、ご注意ください。
 なお、尼崎市の方だけが利用できる事業ではなく、西宮市、宝塚市、芦屋市、伊丹市、大阪府、大阪市の方々も活用いただけますので、詳しくは各都道府県並びに下記お問合せにご相談ください。

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〔兵庫県難病支援事業HP〕https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf16/hw12_000000130.html

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